ゴーグル不要の空間VRで新たな没入空間を創出 「フォレストデジタル」辻木勇二さん
財務省からIT業界、そして北海道へ
――北海道とつながったきっかけは何ですか?
「アジア開発銀行の次に、財務省に中途採用で入省し、地球環境問題や気候変動問題を担当しました。当時、iPhoneの登場やインターネットの普及が進む中で、テクノロジーを使って多くの人の課題解決ができるのではないかと感じました。橋や発電所を作ることも重要ですが、新しい分野に飛び込みたいという気持ちが高まり、財務省を辞めてIT業界へ転身しました。GREE、ヤフー、メルカリの3社を経験してから起業しました。ヤフーに勤めている頃に、十勝の浦幌町との結びつきができました。浦幌町で地域課題を解決するボランティアの募集があり、地域創生に携わりたいと考えていた私も手を挙げました。実は、今のフォレストデジタルのCTOである原田もそのボランティアに参加していました。そうして浦幌町でみんなが集まったのです」
浦幌町でのスピード起業
――浦幌町で起業したのはなぜですか?
「ITを使って課題を解決したいという思いがあり、自分で会社を作って起業する必要があると感じていました。『uralaa(ウララ)』という森に包まれる空間のプロダクト開発とプレテストを行い、事業としていけるという手応えを感じました。いよいよ会社を作ろうという時、浦幌の皆様と仲が良かったので、東京で起業しようかと考えていることを話しました。すると、浦幌町の林業パートナーである北村林業の北村さんが、『それなら浦幌町で会社を作ったらどう?』と言ってくださったのです。浦幌には住んでいないと伝えると、すぐに町長に話してくださり、午前中に話をしてお昼には町長から承諾を得て、午後にはお願いするという、歴史的なスピード感で浦幌町での本社設立が決まりました。会社創業の2ヶ月ほど前のことでした」
「wowとHappiness」を世界中へ
――現在、特に力を入れていることは何ですか?
「『uralaa(ウララ)』というイマーシブ空間では、これまで森や自然、観光資源といったアーカイブ(撮影・編集された映像)からスタートしてきましたが、昨年1年ほどかけてライブ配信の開発ができました。具体的には、昨年の夏に勝毎花火大会をライブ上映し、十勝の花火を東京のショールームで皆様に見ていただきました。ビールを飲みながら楽しんでいただくなど、地域のお祭りや花火大会、スポーツ、音楽、エンターテインメントといった分野に広げていきたいと考えています。森林浴のようなリラックス効果だけでなく、包まれることによる臨場感、興奮、熱狂といった体験にもVRは活用できるのです」
――辻木さんが描く「ボス」とはどのようなものですか?
「初めは3人で創業するのですが、本当に小さなボートを漕いでいるような感覚です。大きな荒海の中で、いつ転覆してもおかしくないような状況で、みんなで船を漕いでいます。その中で、『俺たちはこっちに進むんだ』とみんなに言いながら一生懸命漕ぐ、船頭役のようなイメージです」
――今後の展望について聞かせてください。
「私たちの会社のミッションは『wow and happiness anywhere in the world』です。感動や幸せを世界中のどこにでも届けていくことを目指しています。『uralaa(ウララ)』は、体に何もつけなくていいのが特徴です。ヘッドマウントディスプレイやVRゴーグルが不要なので、小さなお子さんから車椅子に乗られているお年寄りの方まで、誰もが体験できます。言葉がなくても、包まれることで感じることができるという利点もあります。例えば、以前私が携わっていたカンボジアの小学校にイマーシブ空間を作り、なかなか行けない日本の農業の世界を見たり、世界中の文化を知ったりと、何かを学び、きっかけになるようなものを作りたいと考えています」
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